書評 リーダーの教養書

 アメリカのリーダーに勝てないのは、教養力の差だった⁉

 リーダーの教養書 
選者 上田紀行・岡本裕一朗・大室正志・森田真生・長谷川眞理子大竹文雄
   中島聡・猪瀬直樹・岡島悦子・楠木建出口治明
 

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1 なぜ、リーダーには教養が必要なのか?

なぜリーダーには教養が必要なのだろう。
それは、抽象度が高い知識ほど、実は実用的であるからだ。
 
一見すると、変化の激しい時代には、新しく実用的な知識の方が有効な気がするが、
現在実用的な知識は、一年もすれば陳腐化してしまうかもしれない。
 
1年前に、オンラインでの会議や在宅勤務が主流になるなんて、誰が想像していただろうか。
 
それに対し、教養というものは、そう変わるものではない。
教養を身につけて抽象度を上げて思考することができれば、すぐには役に立たなくても、本質的なものが何であるかを理解することができる。
マイクロソフトビル・ゲイツフェイスブックマーク・ザッカーバーグ、アマゾンのジェフ・ベゾスといったアメリカのトップリーダーたちは、科学を初め、歴史や文学に精通した教養人であるらしい。
 
厳しい経営判断をしなければならない時、リーダー自身が右往左往することはできない。
なぜなら、目の前で起きている現象を、「要するにこういうことだ」と単純化して、自らの確信に基づいて決断するのが、リーダーの仕事だからだ。
物事の構造を単純化することができなければ、判断することはできないし、判断の根拠を人にうまく伝えることもできない。
 
その論理的な思考のもとになるものが、教養であると筆者たちは言っている。
教養の深さが、物事をパターンとして認識する力を養い、判断力を鍛える。
 
例えば、歴史を知るということは、パターン認識の能力を身につける上で最上のトレーニングになる。
人は未来のことを知ることはできないが、過去に起きた歴史から学ぶことはできる。
 
要するに、リーダーは何を原動力にして生きていくのか?
何を自分の判断軸として、部下たちをリードしていくのかが問われている。
 
 

 2 教養を身に付けるために、お薦めな方法は読書

教養を身に付けるには、読書をすることがお薦めだ。
それは、講演会に参加するなど直接話を聞くよりも、時間やお金が節約でき、圧倒的にコスパがいいからだ。
また、直接会うことができない過去の人間とも対話することができるし、現在まで読み継がれている本からは、普遍的な知恵を得ることができるからでもある。
 

3 お薦めポイント

本書は、歴史、経営、リーダーシップ、日本近現代史、コンピューターサイエンス、経済学、進化生物学、数学、医学、哲学、宗教という、11の分野に分けて、筆者お薦めの教養書が記載されている。
プリンストン数学大全」のように手に取るのもためられるようなものもあれば、三島由紀夫の「金閣寺」のような小説もあるので、自分の興味を持った分野や、読み易そうなものから挑戦することができるだろう。
 
アメリカのリーダーたちが、本当にこのような広範な知識を持っているとしたら、人間として相当魅力的なんだろうなと思ってしまう。
 
私はまだ、このリーダーの教養書を読み終えたばかりで、実際にこの中の本を読んではいないが、各分野から1冊づつでも手に取っていき、知的で幅の広い人物になれるよう努力していきたいと思っている。
 
2020年12月5日