これが170年前の作品⁈ 大英博物館 北斎展(サントリー美術館)

葛飾北斎の版画、肉筆画の展示会に行ってきました。
 
北斎と言えば、モネやドガゴッホなど海外の印象派の画家たちに影響を与えたことで知られていますが、大英博物館が所蔵している、イギリス人収集家が日本から持ち帰った北斎作品が中心となった展示会でした。
 
有名な富嶽三十六景を初め、人物画、鳥、花、魚と多彩な作品が揃っていましたが、共通するのはどの作品も、飛び出してきそうな躍動感がありました。
うねる川の流れや、力強く打つ滝も、そんなに複雑な線が書き入れられている訳ではないけれど、その構図や一緒に書かれている人物との対比からか、人間なんて一瞬で翻弄されてしまうような自然の驚異までもが伝わってきます。

 
富嶽三十六景でも、大井川を渡る人足や、樽を削る職人など庶民を描いていますが、他の作品を見ても庶民たちが絵の中で生き生きと躍動していて、北斎が庶民の生活を興味深く観察していんだろうなと想像できます。

(為朝図 一幅 江戸時代 文化8年(1811) 大英博物館 ウィリアム・アンダーソン旧蔵)

 
私が今回特に注目したのは、鳥や魚の一連の作品群やです。
 
「鶯に梅」というのが、春の定番の構図だと思うのですが、「鶯に薔薇」という、私自身、初めて見た組み合わせや、水に潜っている鴨が水の屈折で歪んでいる構図など、伊藤若冲水墨画でみる、静的な鳥や魚たちの構図とは一味も二味も違うのです。(もちろん伊藤若冲も大好きですが)
 
こういう構図の発想は、いったいどういったところから湧いて出るものなんでしょう?
 
没後170年を経ても、いまだに斬新さを感じる北斎、今存命であったら、どんな作品を生み出してくれたんだろうと、いろいろ想像してみたくなる刺激的な展覧会でした。