(書評)脳を鍛えるには運動しかない!

脳を鍛えるには運動しかない!~最新科学でわかった脳細胞の増やし方

 著:ジョンJレイティ withエリック・ヘイガーマン NHK出版 2009年3月

 

内容

10年前の著作なので、最近の治験でもっと新しいことが発見されているかもしれないけれど、運動が脳に与える良い影響について、科学的な知見に基づいて述べている。

 

作者のジョン・J・レイティ氏は、ハーバード大学医学部臨床精神医学准教授で、臨床経験や科学的データに基づき、うつ病パニック障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、依存症、産後うつのなどの症状は、一定程度の運動を習慣化することによって症状が改善すると説いている。

 運動のすごいところは、それらの症状を改善するために処方される薬と同程度か、それ以上の効果を作り出すことが臨床実験で明らかになっているということだ。

 

そうは言っても、運動により刺激が起こり、刺激を受領したニューロンが新しい回路を作って脳が変化するまでには時間がかかってしまうので、運動による効果が実感しにくいかもしれない。

 

でも著者が言うように、我々の祖先は長年にわたり生きるために狩猟や採取を行い、食糧を求めて一日中歩き回り、獲物を見つければ猛ダッシュしてきた。

だから、その生活に合わせて、脳や脳を取り巻く器官が進化してきたのだ。

そう、 人間の脳は一日中運動をしてはじめて正常に働くことができるような仕組みになっているということだ。

 

 人間の身体は、運動から得られる刺激によって心筋や筋肉からホルモンが分泌され、特定の物質を脳内に増やしたり、減らしたりして身体の機能をコントロールしている。

だから、現代のようなストレスが多い社会で心身のバランスが崩れてしまったと感じたら、太古の人間と同じように身体を動かして筋肉に刺激を与え、ニューロンの回路を正常に作り直してやれば、また体は正常な活動が行えるようになる。

 

 

年を取ると、新しいニューロンは生成されるが、加齢により正常に活動ができなくなってくる。40歳を過ぎると脳の神経幹細胞は、10年で5%ずつ減っていく。

しかし、それさえも運動によって劣化のスピードを抑えることができるのだ。

 

幸せポイント

1990年代中頃、ミネソタ州マンケートのノートルダム修道女会のシスター・バーナデットは100歳を超えるまで長生きし、最晩年まで認知力テストで上位10%に入る好成績を収めていたが、死後その脳を調べてみると、アルツハイマー病のせいで大半がぼろぼろになっていた。修道女たちは教えの言葉を常に学び、社会問題の解決について話し合い、常に頭を鍛えていたから、脳の他の部分が損傷の埋め合わせをしていたのだろう。

諦めなければ、脳はまだまだ鍛えられるのだ。