書評 ペスト(カミュ)

書評 ペスト(カミュ

 
「ペスト」は、
1947年、実に74年前に出版された作品だが、今起きているコロナ禍で私たちが置かれている状況にあまりにも似ていて、共感というより気持ち悪さを感じた。
 
ある街をペストの感染拡大が襲い、日々100人以上の人が死に、医療従事者は疲弊し、人々は希望を失っていく。
 
ただ今と異なるのは、震災下で起きていたように、有志の人々が立ち上がり、市民保健隊を作って医療従事者の負担を引き受けたり、隔離施設の警備を行ったりする点だ。
 
人々は共に助け合い、親しい人と会えない気持ちを慰め合いながら、この感染が収まるまで、半ば諦め、でもわずかな望みを持ちながら日々を暮らしている。
 
この物語の登場人物であり、語り手である医師リウーも、ペスト禍を神の与えた罰であると受動的に生きるより、目の前の人を助け、わずかな望みを持ってペストと戦う生き方を支持する。
 
今、新型コロナの感染がいまだかつてないほど拡大しているが、ワクチンの効果を信じ、自分にできる感染対策をしっかりやり、「共に支え合って乗り切っていこうという気持ち」が一番欠けていて、一番大切なことではないかと思った。