最悪の予感 パンデミックとの戦い 書評

著者:マイケル・ルイス 2021年7月15日
 
これは、マイケル・ルイスが作った作り話ではない、ノンフクションである。
 
この本を読んで衝撃を受けたのは、新型コロナウィルス感染症でいち早くワクチンを民間会社に作らせ、自国民のワクチンを確保したアメリカの、感染症対策が機能していないという現実を知ったことだ。
 
その主要な要因は、政権が変わるたびに政策やスタッフが丸ごと入れ替わり、前の政権が重要だとおもっていた感染症対策が引き継がれていかなかったからだ。
 
そして、アメリカの疾病対策センター(CDC )のトップは政権から指名されるという仕組みになっていて、大統領に逆らえば解任されてしまう。つまり、大統領の気に入るような対策しか打てない。
 
では、アメリカが感染症の流行に対して何も手を打っていなかったかというと、ジョージ・ブッシュ大統領は新型インフルエンザのパンデミック対策が必要であると気づき、対策計画を作らせている。
それが、オバマ政権、トランプ政権へと移る中でその重要性に注意が向けられなくなってしまっただけなのだ。なんてもったいないんだろう。
 
ブッシュ大統領の指示のもと、当時ワシントンに集まったメンバー達が考えたのは、学校の一定期間の閉鎖など、人に動きに社会的制約をかけること。
そして、1つの対策では効果は小さいが、スイスチーズを何枚も重ねるように、複数の対応策で穴を埋めていくことを方針としていた。
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日本の新型コロナウィルスの感染症対策は、これがベースになっているのか?それは良くわからない。
 
2002年に流行したSARS重症急性呼吸器症候群)、2012年のMARS(中東呼吸器症候群)、2020年の新型コロナウィルスと、10年ごとに新たなコロナウィルスの大規模な流行が起こっている。感染症対策は新型コロナウィルスで終わる訳ではないだろう。
 
本書にもあるとおり、「想像力と連携」こそが、感染症を人類が乗り越えるために不可欠なのだろう。