書評 テクノロジーの未来が腹落ちする25のヒント

テクノロジーの適切な使い方

本書は、朝日新聞経済部がAIの進化に伴って社会がどのように変わるのか、私達が今取るべき選択肢は何なのかを、25の論点で整理したものです。
 
第1章では、私たちの雇用医療教育など、あらゆる局面で今後どのような変化が起きるか、第2章では新たなルーラー(支配者)について第3章ではテクノロジーの進化を社会全体の役に立たせるために今取るべき選択肢を示しています。
 
私が一番気になったのは、データーを持つ者が圧倒的な力を持つという点です。
テクノロジーは使われる人によって夢の技術でも最悪の技術にでもなります。
個人データが良心的な政府の手に集約されれば良いのですが、自分の権力を守るため、自分の身銭を増やすような独裁者に握られてしまえば、個人の人権などというものはひとたまりもなく踏みにじられてしまうでしょう。
それは、核兵器を誰が持ち、誰が操るかという恐ろしさと同じだと思います。
 
論点16では、私たちの信用度合がスコア化され、就職や結婚などに利用されるような仕組みが既に中国で始まっているという事例が記載されています。
その人が信用できる相手なのかどうかを知る為には、信用スコアは有効な手掛かりになるかもしれませんが、もし信用スコアで低い点が付いてしまったとしたら、一旦落としてしまった信用を取り戻すことができるのでしょうか。
お金を借りるということだけに利用されるのならまだしも、中国のように結婚や就職のような人生の一大事を左右ものまでに使われるとしたら、1回の失敗が取り返しの無いことになってしまわないでしょうか。
 
人間の良いところは、失敗してもやり直すせること、たとえ犯罪を犯したとしても、更正して正しい道を歩いて歩んでいる人はたくさんいるはず、しかし信用スコアに頼った社会では、そのようなやり直しのきかない社会になってしまうのではないでしょうか。
 
しかしながら、論点25では、この信用スコアを、貧困を解決する手段として有効に使っている事例が記載されています。
フィリピンでは、勤勉に働いたかどうかで信用スコアを獲得できるような金融システムが開発され、今まで金融機関からお金が借りられなかった人が、その日暮らしから脱出することができるようになっています。
 

♡幸せポイント

テクノロジーは便利だし、今まで不可能だと思っていたことができるようになるなど無限の可能性を秘めている。
特に貧困の撲滅や質の高い教育の恩恵を全ての人類が教授するためには有効な手段となるような気がする。
個人情報の流出や、悪用などのリスクはあるけれど、あまり恐れすぎず、不具合が出れば適切に監視するしくみを構築していけば良いのではないかと思った。