仕事ができない人への配慮って? (書評)おいしいごはんが食べられますように

職場には弱い人がいて、強い人は弱い人を守ってあげなければならない。
守るのが当たりまえ。
 
だから、無理な人に残業させてはならないし、その分の仕事は強い人の誰かが引受けなければならない。
そしてそれを命令するのが上司の役目だが、「本当にそれでいいのか?」といつも迷ってしまう。
 
強い人は人の倍働き、弱い人はできる分だけ働く
強い人は能力があるからと転勤させられ、弱い人は居心地の良い部署に居られるように配慮される
強い人は仕事で職場に貢献し、弱い人は職場の潤滑油になろうと仕事以外のことを頑張る
強い人はストレスが溜まり、弱い人はストレスを溜めないように配慮される
強い人は「弱い人を守るべき」という暗黙の正義に抵抗するが、「仕方ないでしょ」という同調圧力に結局押しつぶされる
 
本書に登場する芦川さんは、弱い人の典型だ。
身体も心も弱いから、残業も苦手な仕事もしなくて良い。
でも性格はめちゃくちゃ良く、いつも笑顔を忘れず、料理もなかなかの腕前だ。
 
一方、恋人の二谷、同僚の押尾さんは強い人の典型で、いつも割を食っている。
だから、仕事ができないで迷惑をかけているお詫びにと、芦川さんが持ってくる手作りのスイーツを「気持ち悪い」と感じる。
 
しかし、数か月に渡る残業に疲弊しているにも関わらず、他の同僚たちは、毎日残業もせず早帰りしてスイーツを作っている芦川さんをべた褒めし、芦川さんはますます生き生きとスイーツ作りに励む。
 
なんだろうこの読後感。
「仕方無い」という諦めより、もやもやとする心に蓋ができない。
 
せめて、仕事の貢献度だけで単純に給料が決まらないものか、と思ってしまう。